大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和48年(特わ)333号 判決 1974年4月25日

被告人

1、本籍

東京都品川区西五反田六丁目二七三番地

住居

東京都世田谷区赤堤一丁目九番四号

職業

会社役員

氏名

武藤裕

年令

四〇年(昭和八年一二月三〇日生)

2、本店所在地

千葉県市川市八幡二丁目六番七号

事務所所在地

東京都渋谷区千駄ケ谷五丁目二一番五号

代々木リビング七〇一号

商号

有限会社総武開発

代表者

代表取締役 加賀昇

被告事件

1、の被告人につき所得税法、法人税法各違反

2、の被告人につき法人税法違反

出席検察官

河野博

出席弁護人

1、の被告人につき野村佐太男

2、の被告人につき窪田澈(主任)、桂川達郎

主文

1、被告人武藤裕を懲役八月および罰金八五〇万円に、

被告人有限会社総武開発を罰金一五〇万円に、それぞれ処する。

2、被告人武藤裕において右罰金を完納できないときは、金五万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

3、被告人武藤裕に対し本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

第一(所得税法違反)

被告人武藤裕は、東京都渋谷区道玄坂二丁目三番二号大外ビルにおいて、「キヤバレーフアイブスター」「キヤバーフアイブスター」を、同区渋谷一丁目二四番二号朱ビルにおいて、「クラブフアイブスター別館」を、同区道玄坂二丁目二五番一八号平川ビルにおいて「スナツクフアイブ」を経営していたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外して架空名義の簿外預金を設定する等の方法により所得を秘匿したうえ、昭和四四年分の実際総所得金額が別紙第一記載のとおり六七三七万六六四七三円であつたのに、昭和五六年三月一四日東京都世田谷区松原六丁目一三番一〇号所在の所轄北沢税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一五一六万〇八六八円でこれに対する所得税額が六二七万二四〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もつて右不正の行為により同年分の正規の所得税額四〇三七万一六〇〇円と右申告税額との差額三四〇九万九二〇〇円(その算定は別紙第三記載のとおり)を免れたものである。

第二(法人税法違反)

被告人有限会社総武開発(以下被告会社という)は肩書地に本店を置き(昭和四六年九月一〇日東京都渋谷区渋谷一丁目二四番二号から本店を移転)、キヤバレー、バー等の経営を目的とする資本金三〇〇万円の有限会社であり、被告人武藤裕(以下被告人という)は、被告会社設立の昭和四三年六月一一日から昭和四六年九月八日までの間被告会社代表取締役としてその業務全般を統括掌理していたものであるが、被告人は被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部を除外する等の方法により被告会社の所得を秘匿したうえ、昭和四四年六月一日から昭和四五年五月三一日までの被告会社の事業年度における実際所得金額が別紙第二記載のとおり一六四九万二一五七円あつたのに、昭和四五年七月三一日東京都渋谷区宇田川町一番三号所在の所轄渋谷税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一四二万九一五七円でこれに対する法人税額が四〇万〇一〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、もつて右不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額五七九万八三〇〇円と右申告税額との差額五三九万八二〇〇円(その算定は別紙第三記載のとおり)を免れたものである。

(証拠の標目)

判示第一、第二の事実につき

一、被告人武藤裕の当公判廷における供述

一、同被告人の検察官に対する昭和四八年二月二一日付供述調書

一、次の者に対する大蔵事務官の各質問てん末書

1、被告人武藤裕(昭和四七年三月二日付、同月二二日付、同年一一月二五日付、同月二九日付、同年一二月一三日付)

2、加賀昇(昭和四七年二月二八日付、同年三月二八日付)

一、林秀光作成の昭和四七年一二月一五日付上申書

一、押収してある次の各証拠物(いずれも昭和四八年押第一四二七号のもので、かつこ内はその符号)

<1>売上集計表一袋(2)、<2>源泉徴収票一袋(26)、<3>諸給与支払内訳明細書綴一袋(27)

判示第一の事実につき、

一、押収してある所得税確定申告書一通(前同押号の17)

一、次の者に対する大蔵事務官の各質問てん末書

<1>加賀昇(昭和四七年一〇月六日付)、<2>林秀光(昭和四七年二月二八日付、同年八月二日付)、<3>武藤昭次(昭和四七年二月二八日付、同年三月一五日付、同年一〇月一三日付、昭和四八年一月二四日付)、<4>被告人武藤裕(昭和四七年五月二七日付、同年一〇月五日付、同年八月二六日付、同年一一月二三日付、同年一二月一六日付、同月二五日付)

一、次の者の作成の各上申書

<1>武藤昭次(昭和四七年一一月九日付)、<2>林秀光(昭和四七年三月一四日付)、<3>被告人武藤裕(昭和四七年一二月一六日付、同月二六日付)

一、次の者の作成の各証明書

<1>矢野宏(昭和四七年三月一五日付一二通、昭和四七年七月二六日付四通、同月一五日付二通、同年五月三一日付、同年一二月一一日付、昭和四八年一月八日付、昭和四七年五月一五日付二通)、<2>寺井堯(昭和四七年七月三日付)

一、坂本一元作成の昭和四七年九月五日付回答書

一、押収してある次の各証拠物(いずれも前同押号のものでかつこ内はその符号)

<1>営業日報集計表コピー一袋(1)、<2>営業日報別館綴一綴(3)、<3>営業日報綴一綴(4)、<4>社交員給料明細表綴一綴(5)、<5>別館社交員給与台帳一綴(6)、<6>請求書綴八綴(7、8、9)、<7>売掛帳二綴(10、11)、<8>別口売掛帳二綴(12、13)、<9>領収書綴一綴(14)、<10>領収書五袋(15)、<11>領収証等一袋(16)、<12>約束手形帳控九冊(18)、<13>当座小切手帳控九冊(19)、<14>当座勘定照合表二綴(20)、<15>小口現金出納表三綴(21)、<16>税金関係領収証等一綴(22)、<17>法人税納付書領収証等一綴(23)、<18>固定資産台帳一綴(24)、<19>社交員給料明細表一袋(25)、<20>不動産契約書一綴(28)

一、次の大蔵事務官作成の各調査書(いずれも被告人武藤裕個人所得調査分)

<1>市川基(昭和四七年一二月一六日付三通)、<2>長谷川正視(昭和四七年一二月一六日付三通)、<3>山田富士男(昭和四七年一二月一六日付二通、同月二七日付)、<4>大浜浩(昭和四七年一二月一六日付)

判示第二の事実につき、

一、押収してある法人税確定申告書一綴(前同押号の33)

一、登記官認証の被告会社の登記簿謄本

一、加賀昇の検察官に対する昭和四八年三月一日付供述調書

一、次の者に対する大蔵事務官の各質問てん末書

<1>林秀光(昭和四七年一一月八日付)、<2>被告人武藤裕(昭和四七年一〇月三日付、昭和四八年一月二四日付)

一、被告人武藤裕作成の昭和四七年一一月二三日付上申書

一、長田嘉男作成の昭和四八年一月三一日付証明書

一、法人税決議書写一通

一、押収してある次の各証拠物(いずれも前同押号でかつこ内でその符号を示す)

<1>営業日報集計表コピー二袋(29、30)、<2>給与台帳綴一綴(31)、<3>総勘定元帳一綴(32)、<4>法人税確定申告書一綴(34)、<5>入金伝票一袋(35)、<6>社交員給料明細表綴一綴(36)、<7>日報綴二綴(37)、<8>営業日報綴一綴(38)

一、次の大蔵事務官作成の各調査書(いずれも被告会社の所得調査の分)

<1>市川基(昭和四七年一二月一六日付二通)、<2>大浜浩(昭和四七年一二月一六日付)、<3>山田富士男(昭和四七年一二月一六日付)

(確定裁判)

被告人武藤裕は昭和四七年一一月一六日東京地方裁判所で業務上過失傷害、道路交通法違反罪により禁錮八月執行猶予四年に処せられ、右裁判は同年一二月一日確定したものであつて、この事実は同被告人に対する昭和四九年一月三一日付検察事務官作成の前科調書の記載と同被告人の当公判廷における供述により明らかである。

(法令の適用)

1、適用罰条

(1)  被告人武藤裕の判示第一の事実につき所得税法二三八条(懲役刑と罰金刑とを併科)、同第二の事実につき法人税法一五九条(懲役刑選択)

(2)  被告会社につき法人税法一五九条、一六四条一項

2、併合加重

被告人武藤裕の判示第一、第二の罪につき刑法四五条後段、五〇条、四五条前段、懲役刑につきさらに同法四七条本文、一〇条(重い判示第一の罪の刑に法定の加重)、罰金刑につき同法四八条一項

3、労役場留置

被告人武藤裕の罰金刑につき刑法一八条

4、執行猶予

被告人武藤裕の懲役刑につき刑法二五条一項

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 池田真一)

別紙第一

修正損益計算書

武藤裕

自昭和44年1月1日

至昭和44年12月31日

<省略>

<省略>

別紙 第二

修正損益計算書

有限会社 総武開発

自 昭和44年6月1日

至 昭和45年5月31日

<省略>

<省略>

別紙 第三

税額計算書

1.武藤裕 昭和44年分

<省略>

(注) 66,602,000×75%=49,951,500

49,951,500-9,481,500=40,470,000

2.有限会社 総武開発

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例